僕にとっての007はロジャー・ムーア—『私を愛したスパイ』少年時代の記憶

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初めての007は、ロードショー枠で

僕が初めて007を見たのが、この『私を愛したスパイ』だった。

あの頃は月曜日と水曜日と金曜日には必ず2時間のロードショー枠があって、そこで放送される007と言えばこの作品だった。

だから僕の中では、007はロジャー・ムーアが1番なんだ。ショーン・コネリーじゃなくて、ロジャー・ムーア。これは今でも変わらない。

伝説のオープニング:ユニオンジャックのパラシュート

映画は、イギリスとソ連の原子力潜水艦が相次いで消息を絶つという謎の事件から始まる。それを調査するため、ボンドはオーストリアのアルプス山中から呼び戻されるんだけど、この冒頭の雪山シーンがすごかった。

ソ連のスパイに追われたボンドが、スキーで追跡者を振り切り、崖から飛び降り、落下しながらユニオンジャック柄のパラシュートを開く。

あのシーンは何回見てもワクワクする。あの映像は、少年だった僕の心に焼き付いて、今でも鮮明に思い出せる。

バーバラ・バックの美しさに心を奪われて

そして、エジプトのカイロで登場するのが、バーバラ・バック演じるソ連のスパイ、アニヤ・アマソヴァ(コードネーム:トリプルX)。彼女があまりにも美しすぎた。知的で、有能で、そしてあんなにも美しい。

ボンドとアニヤは最初はライバルとして出会うんだけど、イギリスとソ連の両政府から共同作戦を命じられて、協力することになる。

恋人を殺された女スパイ—復讐の誓い

でも実は、オーストリアの雪山でボンドが殺したソ連のスパイは、アニヤの恋人だった。
彼女はそのことを知って、「任務が終わったらあなたを殺す」とボンドに告げる。

だから、ロジャー・ムーアは劇中でバーバラ・バックに一時的には恨まれていたわけだけど、それでも僕はロジャー・ムーアになりたかった。彼女の隣にいられるなら、恨まれてもいいとさえ思っていた。

狂気の海洋学者ストロンバーグの野望

事件の黒幕は、海洋学者カール・ストロンバーグ。彼は奪った原潜から核ミサイルを発射して第三次世界大戦を引き起こし、地上文明を破壊した後、海底に新しい文明を築こうと企んでいた。

地中海に浮かぶ海底基地「アトランティス」で、海こそが人類の未来だと語る彼の狂気が印象的だった。

不死身の殺し屋ジョーズ—恐怖とユーモアの絶妙なバランス

そして忘れられないのが、鋼鉄の歯を持つ殺し屋ジョーズ。

身長2メートル以上の巨漢で、その鋼鉄の歯で何でも噛み砕く。カイロの遺跡、列車の中、そして海底基地まで、何度もボンドとアニヤを追い詰めるんだけど、どんなに倒されても生き延びる不死身ぶりが凄まじかった。

車が崩れ落ちる事故に遭っても、サメのいる水槽に落とされても、平然と這い上がってくる。

恐ろしいんだけど、どこかコミカルで愛嬌もあって、少年だった僕も彼が画面に出てくるたびにドキドキした。

夢の秘密兵器:水陸両用ロータス・エスプリ

何より印象的だったのが、水陸両用のボンドカー、ロータス・エスプリ。

Qから支給されたこの白いスポーツカーが、追跡されて海に飛び込むと、そのまま潜水艦に変形する。水中を進みながら、ヘリコプターをミサイルで撃墜するシーンは、もう夢のようだった。

あれを見て、いつかこんな車に乗りたいと思ったものだ。

壮絶なクライマックス—イデオロギーを超えた団結

物語のクライマックスは、ストロンバーグの巨大タンカー「リパルス号」と海底基地「アトランティス」での壮絶な戦い。リパルス号の中には、行方不明になっていた英ソの原潜が収容されていて、ボンドは捕らえられていた水兵たちを解放して反撃する。

英国、ソ連、アメリカの水兵たちが、イデオロギーを超えて共通の敵と戦う姿は、当時の僕にもなんだか熱いものを感じさせた。

愛が憎しみに勝つ—忘れられないエンディング

核戦争の危機を回避したボンドは、単身アトランティスへ向かい、人質となったアニヤを救出する。

最後は、爆発する海底基地から脱出ポッドで逃れるんだけど、ポッドの中でアニヤはボンドに銃を向ける。
でも結局、彼女は引き金を引けなかった。
二人が共に過ごした時間と、築き上げた信頼が、復讐心に勝ったんだ。

そして二人は抱き合う。このエンディングも、少年だった僕の心に強く残っている。

何度も見た、僕にとっての007

この作品を何度も見た。

月曜、水曜、金曜のロードショー枠で繰り返し放送されるたびに、僕はテレビの前に座った。

バーバラ・バックの美しさ、雪山のスキーシーン、ロータス・エスプリの水中アクション、ジョーズの不死身ぶり。そのすべてが、僕にとっての007だった。

だから、007はロジャー・ムーアが1番なんだ。これは僕の中で揺るぎない真実だ。

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