序章:静かな夜風の中で
10月9日、シカゴの夜は秋らしい涼しさを帯びていた。
街の光が少しずつ落ちていく頃、リグレーフィールドの照明だけが眩しく輝いていた。
シリーズの行方を左右する第4戦──カブスが負ければ今季は終わり、勝てば望みをつなぐ。
その重圧の中で、チームはようやく“いつもの野球”を取り戻した。
初回:ハップの一撃が夜空を切り裂く
ポストシーズンに入ってから、ずっと沈黙していたカブス打線。
だが、この夜は違った。
初回、2死一、二塁からイアン・ハップが放った打球は高く舞い上がり、
ライトスタンドの最奥に消えた。
まるで夜空を突き抜ける流星のような3ランホームラン。
この瞬間、リグレーフィールドの空気が変わった。
寒気を含んだ風の中でも、観客の声援は温度を上げるように広がっていった。
「ハップの一撃で、このチームはようやく息を吹き返した」
(試合後、カウンセル監督)
中盤:無失点リレーと静かな緊張
先発のマシュー・ボイドは、ホームでの強さを証明するようなピッチングを見せた。
4回2/3、被安打2、無失点、6奪三振。
力強いストレートで押し込み、要所ではチェンジアップを丁寧に決める。
五回、2死二、三塁のピンチを迎えると、ここで登板したのがダニエル・パレンシア。
一打同点の場面を、わずか数球で切り抜けた。
そこからは、ブルペン陣の無失点リレーが続く。
- パレンシア
- ドリュー・ポメランツ
- ブラッド・ケラー
- ケイレブ・ティールバー
4人がつないだ完封リレーは、ブルワーズ打線をわずか1安打に抑えた。
リリーフの一人ひとりが淡々とアウトを積み重ねるたび、
スタンドのざわめきが、徐々に確信の拍手へと変わっていった。
六回:ショウの一打で流れを決定づける
六回、カブスの攻撃は小さな綻びから始まった。
カーソン・ケリーの打球を、ブルワーズ三塁手が痛恨のエラー。
その後、犠打と四球でつくったチャンスに、
新人マット・ショウが落ち着いてライト前へ弾き返した。
このタイムリーで4−0。
重く張りつめていた空気が、ふっと解けた瞬間だった。
終盤:タッカーとブッシュ、夜を決める一発
七回、カイル・タッカーが放った打球はまっすぐナイトスカイを切り裂いた。
完璧な当たりだった。
その後の八回には、マイケル・ブッシュがポストシーズン4本目となるホームラン。
6−0。
この夜、カブスは初回から最後まで、リズムを手放すことはなかった。
終章:再び、希望の灯がともる
試合終了の瞬間、リグレーフィールドのスコアボードが光り輝いた。
「6−0」。
ファンの歓声は夜風に乗って街の上を流れていった。
カブスはシリーズを2勝2敗のタイに戻し、
運命の第5戦は敵地ミルウォーキーへ。
「ここからが本当の戦いだ。俺たちはまだ生きている」
(イアン・ハップ)
夜のリグレーフィールドには、
“希望”という名の光がもう一度ともっていた。
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