秋の陽光がまぶしい昼下がり。
シアトルの空は抜けるように青く、スタンドにはいつもより少し早く集まったファンたちのざわめきが広がっていた。
T-モバイル・パークで行われたア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)第5戦。
シリーズは2勝2敗のタイ。どちらが王手をかけるか――その行方を見守るファンの目は真剣そのものだった。
序盤:先制弾と静かな攻防
試合が動いたのは二回。
マリナーズの頼れるベテラン、エウヘニオ・スアレスが高めの速球を完璧にとらえた。
白球は昼の光を切り裂き、レフトスタンド中段へ一直線。
球場全体に歓声が響き渡る。
スアレスのソロ本塁打で、マリナーズが先制点を挙げた。
一方、ブルージェイズの先発 ケビン・ゴーズマン も落ち着いていた。
鋭く沈むチェンジアップで三振を重ね、3回以降は立ち直りを見せる。
昼下がりのピッチャーズ・マウンドには、眩しい太陽と緊張の影が同居していた。
中盤:反撃を許すも崩れない粘投
四回、ブルージェイズの反撃。
ジョージ・スプリンガーのタイムリーで同点に追いつかれると、
五回にはアーニー・クレメントのヒットで2−1と逆転された。
だが、マリナーズの先発 ブライス・ミラー は崩れなかった。
4回を投げて4安打1失点。
試合後には「今日の太陽の下で、マウンドに立つだけで幸せだった」と語る。
夏の終わりを思わせる陽射しの中で、若い右腕の汗が光った。
そして、胸筋の負傷から復帰したエース ブライアン・ウー が五回から登板。
制球に苦しみながらも、要所を締めて2イニングを投げ切った。
彼の姿に、ベンチもスタンドも息をのんだ。
終盤:八回、太陽を背に放たれた反撃の光
そして八回――シアトルが揺れた。
先頭打者 カル・ローリー。
ブルージェイズの3番手リトルの初球を強振。
高々と上がった打球は太陽の光に包まれながら、レフトスタンドへと消えていった。
同点ソロ。2−2。
T-モバイル・パークの歓声は、まるで夏の嵐のように轟いた。
その声援が、マリナーズ打線にさらなる火をつける。
続く打者陣が3連続四死球で満塁のチャンスを作る。
そして再びバッターボックスに立つのは、二回に先制弾を放ったエウヘニオ・スアレス。
静寂。
そして――快音。
スアレスの放った打球は、右中間スタンド深くへと伸びていった。
白球が太陽の光に溶けるように消えた瞬間、スタンドが揺れた。
満塁ホームラン。
スコアは6−2。
ファンの歓声が波のように押し寄せ、グラウンドの空気までもが熱を帯びた。
最終章:歓喜の青空、王手の瞬間
八回のビッグイニングで流れを完全に引き寄せたマリナーズ。
九回は守護神 アンドレス・ムニョス が3人で締めくくり、
ついに勝利を手にした。
シリーズのスコアは 3勝2敗。
球団史上初のワールドシリーズ進出まで、あと1勝。
試合後、スアレスは照りつける夕陽の中で微笑んだ。
「この球場の光の中で、僕たちはまだ終わっていないと信じていた。」
歓喜の中、シアトルの街は午後の光を浴びてきらめいていた。
海風が頬を撫で、どこかで「Go Mariners!」の声が響く。
その声に応えるように、T-モバイル・パークの青い屋根が静かに輝いていた。
第6戦の展望:トロントで迎える運命の一戦
シリーズの舞台は再びトロントへ――。
マリナーズがワールドシリーズ進出に王手をかけ、ブルージェイズはホームで逆襲を狙う“運命の一戦”となる。
予告先発とキープレイヤー
ブルージェイズは、今季終盤に台頭した期待の新人右腕 トレイ・イェサヴァージ(Trey Yesavage) が先発予定。
マリナーズは、前夜の大逆転劇を引き継ぐ形で、主砲 カル・ローリー、エウヘニオ・スアレス、そして若きスター フリオ・ロドリゲス に注目が集まる。
一方、ブルージェイズ側は ボー・ビシェット や ジョージ・スプリンガー の復調が鍵。
シリーズ全体を通して打線のムラが課題となっており、ホームの声援を背に再び火を吹けるかが焦点だ。
両軍の戦力と展開予測
マリナーズは3勝2敗とリードしており、一気に決着をつけたい構え。
ただし、リリーフ陣の疲労とアウェイでの勝率の低さが不安材料となる。
ブルージェイズは今季ホームで54勝27敗という圧倒的な勝率を誇り、
若手投手とベテラン打線を総動員した“総力戦”の構えを見せる。
勢いで押し切れるか、それとも経験で凌ぐか――シリーズは最高潮を迎える。
注目の試合展開と勝負のカギ
終盤戦に差し掛かり、両軍の投手陣には疲労の色も見え始めている。
このため、序盤の先制点が極めて重要。
一発のある打者――
マリナーズではローリーとスアレス、
ブルージェイズではゲレーロJr.とカーク――
彼らのバットが、試合の流れを変える決定打となる可能性が高い。
また、リリーフのタイミングや守備でのわずかなミスも命取りになる。
シリーズを通して最も張り詰めた空気が、この第6戦で漂うだろう。
すべてを懸けた“総力戦”。
MLBファン必見の、息をのむようなサバイバルゲームが幕を開ける。
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