第5戦:T-モバイル・パークを揺らした15回の死闘
2025年10月10日(日本時間11日)、T-モバイル・パークで行われたアメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)第5戦は、両チームが総力を尽くした延長15回の死闘となった。
「勝てばALCS進出、負ければシーズン終了」という緊張の中、シアトル・マリナーズがタイガースを3−2で破り、2001年以来24年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出を果たした。
この試合はMLBポストシーズン史に残る名勝負。15回まで続いた攻防は、最後の一球まで観客の息を止めた。
投手戦の幕開け:スクーバルとカービーの完璧な序盤
試合は序盤から、両エースによるハイレベルな投げ合いだった。
タイガース先発のタリック・スクーバルは、序盤から圧巻のピッチングを披露。
6回を投げて2安打1失点、13奪三振、無四球の完璧な内容。しかも7者連続三振というポストシーズン新記録を樹立し、MLB全体を驚かせた。
一方、マリナーズ先発のジョージ・カービーも気迫十分。
5回0/3を投げて3安打1失点、6奪三振、無四球と安定感を見せ、スクーバルに引けを取らない堂々の内容だった。
六回:カーペンターの一発でタイガースが先制
試合が動いたのは六回表。
タイガースはケリー・カーペンターが左翼席へ値千金の2ランホームランを放ち、ついに均衡を破った。
その瞬間、沈黙していたデトロイト・ファンの歓声が球場に響き渡り、ベンチは総立ち。
マリナーズにとっては痛恨の一撃となった。
しかし、シアトルはここからが本領発揮だった。
七回:代打レオ・リバス、起死回生の同点打
1点を追う七回裏、マリナーズのベンチが動く。
代打として登場したのは、ポストシーズン初打席となるレオ・リバス。
緊張の初球、左翼線へと鋭い打球を放つと、これが同点のタイムリーヒットに。
試合は2−2の振り出しに戻り、シアトルの夜が再び熱を帯びた。
ベンチでは指揮官ダン・ウィルソンが拳を突き上げ、スタンドのファンは「Let’s Go Mariners!」の大合唱。
リバスの一打が流れを完全にマリナーズへと引き寄せた。
延長戦へ:両軍ブルペンの極限勝負
八回以降、両軍のリリーフ陣が無失点の投げ合いを続けた。
マリナーズはスパイアー、フィネガン、そして終盤にはクローザーのマット・ブラッシュまでを惜しみなく投入。
一方のタイガースも、メルトン、ホルトン、ベストが立て続けに登板し、延長戦に突入しても集中力を切らさなかった。
T-モバイル・パークの照明が夜空を照らす中、観客は立ち上がり続けた。
1球ごとにどよめきが起こり、15回裏まで続く戦いは、もはや「試合」というより生き残りの儀式のようだった。
そして15回裏:ポランコ、歴史を変えるサヨナラ打
ついに迎えた延長15回裏。
マリナーズはJ.P.クロフォードのヒット、続くランディ・アロザレーナの死球で無死一、二塁のチャンスを作る。
そして、カル・ローリーのセンターフライでクロフォードが三塁へ進塁。送球が逸れた間にアロザレーナも二塁へ。
タイガースはフリオ・ロドリゲスを申告敬遠し、2死満塁。
この劇的な場面で打席に立ったのはホルヘ・ポランコ。
カウント2−2からの5球目、バットを折りながら放った打球がライト前に落ち、クロフォードが三塁から生還。
マリナーズ、3−2でサヨナラ勝ち。
歓声が爆発し、クロフォードはホームプレート上でチームメイトに抱きしめられた。
シアトルの夜空には花火が上がり、24年ぶりのALCS進出を祝う紙吹雪が舞った。
ヒーローたちの夜
- ホルヘ・ポランコ:15回裏、ライトへの決勝サヨナラ打。ヒーロー・オブ・ザ・ナイト。
- タリック・スクーバル:6回13奪三振。敗れはしたが、歴史に残るパフォーマンス。
- レオ・リバス:代打で同点打を放ち、試合の流れを変えた新星。
- ジョージ・カービー:粘りの投球で試合を立て直した。
ALCSへ:2001年以来の航海が始まる
この勝利で、マリナーズは2001年以来24年ぶりのALCS進出を決めた。
次の相手は、東地区を制したトロント・ブルージェイズ。
打線ではウラジーミル・ゲレーロJr.が好調を維持しており、マリナーズは投手力でどう立ち向かうかが焦点となる。
今季のマリナーズは、粘りと投手陣の安定感でここまで勝ち進んできた。
その象徴が、この15回決戦の末に掴んだサヨナラ勝利だった。
長く、苦しいシーズンの果てに掴んだ「24年ぶりの航海」。
シアトルの夜は、まだ終わらない。
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