夜に響いた二度の衝撃|シュワーバーが救ったフィリーズの反撃劇

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ドジャースタジアムの夜に、風を切る音がした

10月8日、ロサンゼルスの夜空を切り裂くように、
ひとつの白球が舞い上がった。
ナショナル・リーグ地区シリーズ(NLDS)第3戦。
フィリーズは8−2でドジャースを下し、スイープ敗退を回避。
その中心にいたのは、しばらく音沙汰のなかった男、カイル・シュワーバーだった。

夜風の吹くドジャースタジアム。
彼が放った打球は、飛距離455フィート(約138.7メートル)を記録し、
右翼スタンドの奥、観客席のざわめきを切り裂いて消えた。
この一撃が、沈黙していたフィリーズ打線の目を覚まさせた。


四回、山本由伸の制球を撃ち抜いた一撃

試合は序盤、トミー・エドマンのソロホームランでドジャースが先制。
山本由伸は三回まで無安打に抑え、球場には「今日もドジャースが決める」
そんな期待が漂っていた。

だが四回、その空気を変えたのがシュワーバーだった。
カウント0−1から、山本の投じたフォーシームを完璧に捉える。
打球速度は117.4マイル(約188.9キロ)
打った瞬間に分かる、文句なしの一発だった。

この本塁打で、彼は22打数ノーヒットのスランプを脱出。
チームにとってもこの試合初ヒットとなった。
打球がスタンドに届いた瞬間、ベンチの空気が変わったのがはっきり分かった。


続く連打で逆転、そして八回に“再びの衝撃”

同回、ハーパーとボームの連打で一気に逆転。
外野の送球ミスも重なり、一挙3得点でフィリーズが主導権を握った。
山本は5回途中でマウンドを降り、球場のざわめきは静まり返る。

そして八回。
ドジャースファンが「もう十分だ」と言わんばかりに息を飲んだその時、
シュワーバーが再びバットを振り抜いた。
相手はクレイトン・カーショウ。
ベテラン左腕の外角球を強引に右翼へ——この日2本目の本塁打。

ポストシーズン通算23本目のアーチは、
バーニー・ウィリアムスを抜いて歴代3位。
上にいるのは、マニー・ラミレスとホセ・アルトゥーベだけ。
その事実を知っているかのように、彼はホームをゆっくりと踏みしめた。


夜風に沈んだドジャースの影

一方のドジャースは、攻守に噛み合わなかった。
大谷翔平は4打数無安打。
山本は5回途中3失点で降板。
ブルペン陣も八回に崩れ、計8失点。
エドマンの先制弾が、むなしく夜空に消えていった。

それでも、2勝1敗。
まだシリーズの主導権はドジャースにある。
ただ、勢いは完全にフィリーズが握った。
その中心には、夜の王のように立つシュワーバーがいた。


明日へと続く、静かな夜

試合後、ドジャースタジアムにはもう歓声はなかった。
代わりに、球場の外から聞こえてくるL.A.の街の雑踏が、
妙に現実的で、冷たく響いた。

シュワーバーは試合後、短く言った。

「まだ何も終わっていない。ここからだ。」

その言葉が夜風に乗って消えるころ、
彼のバットはすでに明日の勝利を思い描いていた。

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