2007年に放送されたドラマ「有閑倶楽部」を、配信で視聴し終えるまでに1ヶ月かかった。朝ごはんを食べながら、少しずつ、本当に少しずつ。一気見できなかった理由は複雑だ。このドラマは、面白いのか面白くないのか、自分でもよくわからない、不思議な作品だったのだ。

期待と現実のギャップ
松竹梅魅録を演じる赤西仁。彼のビジュアルは文句なしにいい。KAT-TUNの人気メンバーとして初の単独主演を務めたこの作品で、警視総監の息子という設定も魅力的だ。バイクに乗り、機械いじりが得意で、裏社会にも顔が利く。
だが、私には彼の魅力がいまいち理解できなかった。
クールでカッコいいはずなのに、私の目には「少し優しいヤンキー」程度にしか映らない。硬派で頼れる男という設定のはずが、どこか物足りない。バイクで颯爽と登場するシーンも、困っている人を助けるシーンも、「うん、まあ、悪くはないけど…」という感想しか出てこない。
主人公に感情移入できないというのは、ドラマを楽しむ上で大きなハンディキャップだ。もちろん、これは完全に個人的な好みの問題かもしれない。赤西仁ファンが見れば、また違った印象を持つのだろう。
原作では剣菱悠理が主人公だったと知った。私は原作を読んでいないが、財閥の令嬢で運動神経抜群の破天荒な女性が中心だったなら、もっと面白かったかもしれない、と思ってしまう。ただし、これも読んでいない者の勝手な想像に過ぎないのだが。
輝いていた二人の女優
このドラマで私が心から評価できるのが、美波演じる剣菱悠理と、香椎由宇演じる白鹿野梨子だった。
美波の悠理は素晴らしかった。6番手のキャストだというのに、画面に映るたびに圧倒的な存在感があった。運動神経抜群のアクションシーン、大食いの豪快さ、「ばかたれ」という口癖。すべてが生き生きとしていて、見ていて楽しかった。彼女が中心のエピソードは、朝食の味も格段に良くなった気がする。
香椎由宇の野梨子も魅力的だった。清楚な美貌と男嫌いという設定を、過剰にならずに演じていた点が良かった。深窓のお嬢様という役柄に、きちんと品があり、説得力があった。彼女が画面に映ると、ドラマ全体の空気が引き締まる感じがした。
この二人がいたからこそ、このドラマは最後まで見る価値があったと言える。
賑やかすぎる三人組
横山裕演じる菊正宗清四郎、田口淳之介の美童グランマニエ、鈴木えみの黄桜可憐。この三人については、正直に言って、私には少し合わなかった。
横山裕の清四郎は、生徒会長として知的で完璧な人物のはずだ。「不可能を可能にする、それが有閑倶楽部ですから」という決め台詞も、本来ならカッコいいはずだ。しかし、どうしても演技が大きすぎるように感じてしまった。もちろん、コメディドラマだから多少の誇張は必要なのだろう。関ジャニ∞のファンが見れば、彼の熱演に心打たれるのかもしれない。ただ、私個人の好みとしては、もう少し抑えた演技の方が好きだった、というだけの話だ。
田口淳之介の美童も同様だ。プレイボーイでナルシストという役柄は、原作通りなのだろう。女性を口説くシーンも、怖がるシーンも、彼なりに一生懸命演じていたと思う。ただ、私にはそのテンションについていけなかった。でもこれも、好みの問題だろう。彼のファンにとっては、あの演技こそが魅力なのかもしれない。
鈴木えみの可憐については、玉の輿を狙うキャラクターという設定は面白かった。モデルとしての彼女の美しさは画面映えしていたし、ビジュアル面では文句なしだった。演技については、彼女なりに努力していたのだと思う。私がもっと演技に慣れた彼女を見たかっただけで、それは贅沢な要求なのかもしれない。
要するに、この三人が悪いわけではない。ただ、私の好みとは少しズレていた、というだけのことだ。
コメディとしての挑戦
このドラマは完全にコメディとして作られている。セレブ高校生たちが繰り広げる荒唐無稽な事件、毎回の派手な解決劇。少女漫画原作のドラマ化としては、正統的なアプローチだと思う。
ただ、コメディのテンポやノリが、私にはやや合わなかった。笑えるべきシーンで笑えなかったり、テンポが速すぎてついていけなかったり。でもこれは、朝という時間帯に見ていたせいもあるかもしれない。朝の頭では、このハイテンションな展開を完全に受け止めきれなかったのだ。
夜に、しっかり集中して見たら、また違った印象を持ったかもしれない。あるいは、友人たちと一緒に見てワイワイ言いながら楽しむ、という見方が正解だったのかもしれない。
朝食という微妙な時間

朝ごはんを食べながらの視聴は、一長一短だった。
トーストをかじりながら、バイクアクションシーンを見る。コーヒーをすすりながら、6人の掛け合いを聞く。ヨーグルトをスプーンですくいながら、事件解決の瞬間を見届ける。
朝という、一日の始まりの時間。頭も胃も完全には目覚めていない状態で、このキャラクターの濃い、テンションの高いドラマを見る。合わない日もあったが、美波や香椎由宇のシーンでは、朝から元気をもらえた気もした。
配信だったからこそ、自分のペースで見られた。週に1話ずつ、ゆっくりと。群馬県のロックハート城で撮影された聖プレジデント学園の豪華な映像は、朝の目覚めにふさわしい華やかさだった。KAT-TUNの「Keep the faith」という主題歌も、氷室京介の提供曲だけあって、朝から気分を上げてくれた。
1ヶ月かけて見たからこそ、このドラマとゆっくり向き合えたのかもしれない。
原作を読んでいない者の感想
私は原作を読んでいない。だから、「原作と違う!」という怒りはない。ただ、原作では剣菱悠理が主人公だったと知り、「ああ、それなら美波が主演だったのか」と思った。
なぜドラマでは松竹梅魅録が主人公になったのか。おそらくジャニーズ事務所の赤西仁を主演に据えることで、より幅広い視聴者層を狙ったのだろう。それはビジネス判断として理解できる。
ただ、美波の存在感を見ていると、彼女が主役のバージョンも見てみたかった、とは思う。もちろん、これは結果論であり、制作側には制作側の意図があったのだろう。
2007年度「第11回日刊スポーツ・ドラマグランプリ」で4部門を制したというのだから、多くの視聴者には支持されたのだ。私の感じ方が、必ずしも正しいわけではない。
複雑な感情の正体

1ヶ月かけて全10話を見終えた今、私の感想は複雑だ。
赤西仁の魅録には最後まで感情移入できなかった。横山裕、田口淳之介、鈴木えみの演技も、私の好みとは少しズレていた。でも、美波と香椎由宇は本当に良かったし、ドラマ全体の世界観や衣装、舞台設定は華やかで楽しかった。
面白かったのか、面白くなかったのか。今でもはっきりとは言えない。ただ、1ヶ月間、毎朝このドラマと付き合ったという事実は残っている。途中で見るのをやめなかったという時点で、何かしら引きつけるものがあったのだろう。
そして、ここまで書いてきて、ふと思う。
もしかしたら、私はただ単純に、イケメンたちにヤキモチを焼いているだけなのかもしれない。
赤西仁、横山裕、田口淳之介。彼らはみな、当時大人気のジャニーズタレントだった。画面の中で華やかに活躍し、多くのファンに愛されていた。そして、ドラマの中でも、女性たちから好かれる役柄を演じていた。
私が彼らの演技に「感情移入できない」「浮いている」と感じたのは、もしかしたら、無意識の嫉妬だったのかもしれない。イケメンで人気者で、ドラマの主役を張れる彼らへの、ささやかな妬み。
美波と香椎由宇を高く評価したのも、同じ理由かもしれない。彼女たちの演技が本当に良かったのか、それとも、男性キャストへの複雑な感情が、相対的に女性キャストへの評価を高めたのか。自分でもわからない。
エピローグ:あくまで個人的な意見として

このエッセイで書いてきたことは、すべて私個人の感想だ。
赤西仁が魅力的だと感じる人もいるだろうし、横山裕の熱演に感動した人もいるだろう。田口淳之介のコミカルな演技が好きな人も、鈴木えみの美しさに魅了された人もいるはずだ。そして、原作ファンからすれば、また全く違った視点があるだろう。
私には合わなかった部分もあったが、それはあくまで個人的な好みの問題だ。しかも、その「合わなさ」の背景には、もしかしたらイケメンたちへの単純なヤキモチがあるのかもしれない。そう考えると、自分の評価がいかに主観的で、いかに感情的なものか、よくわかる。
1ヶ月間、朝食とともに過ごした「有閑倶楽部」。美波という素晴らしい女優に出会えたこと、香椎由宇の魅力を再確認できたこと、そして何より、朝の時間に華やかな世界を垣間見られたことは、確かに価値があった。
次はどんな作品を朝の相棒に選ぼうか。今度はもう少し、自分の好みに素直になって、そして自分の感情の正体も理解しながら、選びたいと思う。
そして、もし赤西仁や横山裕、田口淳之介のファンがこのエッセイを読んでいたら、どうか許してほしい。これはあくまで一人の、しかももしかしたらヤキモチを焼いているだけかもしれない男の、個人的な感想に過ぎないのだから。

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